H29 問13


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解説

トランジスタ回路の動作点に関する問題です。
特にこの問題では、\(V_{CE}\)-\(I_C\)特性と直流負荷線の理解が問われますので、
これらに重点を置いて解説します。

まず、この問題では動作点に関して問われており、入力電圧と入力電圧については一切記述がありません。
こういう場合は、\(V_{in}\)、\(V_{out}\)、\(C_1\)、\(C_2\)を全て無視してかまいません。

回路がすっきりしたところで、バイアス抵抗\(R_B\)を導出する手順を以下に示します。

  1. 電源電圧\(V_{CC}\)を求める
  2. ベース電流\(I_B\)を求める
  3. バイアス抵抗\(R_B\)を求める

1.電源電圧\(V_{CC}\)を求める

問題では電源電圧\(V_{CC}\)の値が与えられていないので、まず\(V_{CC}\)の導出を行います。
\(V_{CC}\)は直流負荷線(添付画像の赤色のグラフ)から読み解くことができます。

直流負荷線とは、ベース電流\(I_B\)は一旦無視して、
\(V_{CE}\)が変化したときに流れうる\(I_C\)をグラフ化にしたものです。
(添付画像の中央部右側)

回路のコレクタ側に抵抗\(R_L\)が配置されていることがポイントで、
コレクタ電流\(I_C\)により\(R_L\)に電圧が印加されます。

トランジスタはコレクタ電流\(I_C\)を一定に保とうと働きます。
(コレクタ電流\(I_C\)はベース電流\(I_B\)で決まり、\(I_B\)が変化しなければ\(I_C\)も変化しません)

その結果、電源電圧\(V_{CC}\)と\(R_L\)に印加される電圧の差分が\(V_{CE}\)として
コレクターエミッタ間に印加され、以下の関係式が成り立ちます。
\(V_{CC}-R_B I_B=V_{CE}\) → \(I_B = \frac{V_{CC}-V_{CE}}{R_B}\)

従って、\(I_C=0 A\)となるとき、\(V_{CC}=V_{CE}\)が成り立ちます。
つまり、直流負荷線の\(I_C=0\)となる点(図中A点)の\(V_{CE}\)の値が\(V_{CC}\)となるので、
電源電圧\(V_{CC}=9V\)となります。

2.ベース電流\(I_B\)を求める

次にベース電流\(I_B\)を求めます。
問題より、動作点が\(V_{CE}=4.5V\)に設定されています。

この値をもとに、直流負荷線(添付画像の赤色のグラフ)の\(V_{CE}=4.5V\)の点(図中B点)
と交わる\(V_{CE}\)-\(I_C\)特性(添付画像の黒色のグラフ)を選びます。

\(V_{CE}\)-\(I_C\)特性(添付画像の黒色のグラフ)は図中に複数並んでいますが、
それぞれは\(I_B\)の値ごとの\(V_{CE}\)-\(I_C\)特性を表しています。

各グラフは、コレクタ電流\(I_C\)はベース電流\(I_B\)で決まるので、
\(V_{CE}\)をどんどん大きくしても、コレクタ電流\(I_C\)はベース電流\(I_B\)で定められた値以上に変化しないということを表しています。

ここで選んだ\(V_{CE}\)-\(I_C\)特性はベース電流\(I_B=6\mu A\)で、このとき\(V_{CE}=4.5V\)を印加すると、コレクタ電流\(I_C=1.5mA\)が得られるということを表しています。

従って、動作点\(V_{CE}=4.5V\)としたとき、ベース電流\(I_B=6\mu A\)が得られます。

3.バイアス抵抗\(R_B\)を求める

先に得られた電源電圧\(V_{CC}=9V\)とベース電流\(I_B=6\mu A\)よりバイアス抵抗\(R_B\)の値を求めます。

電源電圧\(V_{CC}\)とベース電流\(I_B\)は以下の関係式を満たします。
\(V_{CC}=R_B I_B + V_{BE}\)

ここでトランジスタの構造上ベースーエミッタ間には
ダイオードが順方向に接続されることになるので、
\(V_{BE}=0.7V\)となるのが普通ですが、問題では\(V_{BE}\)は無視するとしています。

従って、\(V_{CC}=R_B I_B \)となり、
\(R_B = V_{CC}/ I_B = 9V / 6 \mu A = 1.5 M\Omega\)が解となります。

補足として、トランジスタの等価回路について解説しています。
以下の4つのポイントをおさえておきましょう。

  1. ベース電流\(I_B\)は\(V_{CC}=R_BI_B+V_{BE}\)で決まる。
    さらに\(V_{BE}\)はベースーエミッタ間のダイオードの電圧を表しており、おおよそ0.7Vとなる。
  2. エミッタ電流\(I_E\)は\(I_E=\beta I_B\)を満たす。
    \(\beta\) は電流増幅率といい、おおよそ100倍となる。
  3. コレクタ電流\(I_C\)は、\(I_C=I_E+I_B\)の関係を満たす。
    \(I_E>>I_B\)となるので、\(I_C \sim I_E\)と考えてよい。
  4. コレクターエミッタ間の電圧\(V_{CE}\)は、\(V_{CC}=R_LI_C+V_{CE}\)の関係を保つように、
    いい感じに勝手に値が決まる。

トランジスタ回路の電流/電圧の導出には、オームの法則だけでは求めることができず、
トランジスタの特性をきちんと把握しておく必要があります。

慣れるまで非常に苦労しますが、習得すれば電子回路の理解が一気に広がるので、
あきらめずに何度も問題を解きなおしてみてください。