聴覚がもつ不思議な力

この記事の対象となる電験界隈の方
本を読んでいると眠くなる
暗記をするのが苦手な方
静かに座っているのが苦手な方

 

この記事を読んで分かること
聴覚を活用した効果的な勉強法が分かります

 

結論
〇人間にとって「文書の黙読」は高度な技術
 ・難しい内容の文書の黙読は脳の負担が大きく、脳は黙読をやめてしまう

〇「言葉」と「脳」のつながり
 ・目で見た文書や文字は「音」に変換された後、「言語」として処理される
  →文書を視覚情報から聴覚情報に変換(音韻表象)

〇「音読」は効率のいい勉強法
 ・資格情報から聴覚情報への変換がなくなり、脳の負担が減る
 ・口から音を発生することで運動性記憶(長期記憶)となる

〇具体的な勉強法(3個の実例を紹介)
 ・「ブツブツ勉強法」 偏差値95の勉強法(粂原圭太郎さん著)
 ・「セルフテスト勉強法」 偏差値95の勉強法(粂原圭太郎さん著)
 ・「独り言勉強法」 by KWG

 

はじめに

今回は「脳」と「言葉」のつながりを脳科学の観点で解説させていただき、
聴覚を活用した効果的な勉強法を紹介させていただきます。

参考文献

本記事を作成するにあたり、以下の文献を参照させていただいております。
この記事を読んで興味を持っていただいた方は是非読んでみてください。

上田渉さん 「脳が良くなる耳勉強法

粂原圭太郎さん 「偏差値95の勉強法 ダイヤモンド社

樺沢紫苑さん 「学びを結果に変えるアウトプット大全 サンクチュアリ出版

効率が悪い勉強法は?

それでは問題です。以下の3つの勉強方法で最も効率が悪いと思うものを1つ選んでみてください。

(1)静かに参考書を読む
(2)移動中に解説動画の音声のみを聞く
(3)解いたことがある問題を再び解く


どれか一つ選んでくださいね。


決まりましたか?


ほんとにそれでいいですか??


では、、、


私が最も効率が悪いと思う勉強法を発表します。

それは、、、

(1)番です!!!

えーーーっ!そんな馬鹿な!?と思った方のために、


この記事では聴覚が持つ不思議な力を脳科学に基づいて解説していきたいと思います。

キーワードは「視覚は情報を司り、聴覚は思考を司る」です。

 

「言葉」と「脳」のつながり

「言葉で思考するとき聴覚がはたらく」

引用元 脳が良くなる耳勉強法 上田渉 ディスカヴァー・トゥエンティワン

後で紹介しますが、私自身の勉強方法がかなり独特でして、脳に異常があるんじゃないかと思って昔から悩んでいました。

その不安を払しょくしてくれたのがこの本になります。

この本のおかげで、自分の勉強方法が脳科学の観点で正しい方法であるということが理解/納得できたので、
まずは「言葉」と「脳」のつながりについて紹介をしていきたいと思います。

本を読んでいるときってどんな感じ?

本を読んでいるときのことを想像してみて下さい。

というか、今まさに皆さんはこの記事を読んでいるわけで、記事を読んでいる今の状態に対して、
これから質問させてもらいます。

速読が得意な方は、ここでスピードを落として、ゆっくり記事を読んでください。

この記事を読んでいるとき、頭の中でどんなことをしていますか?

頭の中で声を作って、話を聞いているような感覚がありませんか?

私の動画を見たことがある方は私の声っぽい音声で、

私のことを知らない方は、あなたが想像する「電験どうでしょう」で、

ラジオを再生しているように音を作っていませんか?

これって普通のことだと思っているかもしれませんが、すごく不思議なことのような気もしませんか?

この現象にはきちんと名前がついているんです。
読書をしているときに頭の中で音が作られるこの現象を「音韻表象(おんいんひょうしょう)」といいます。

脳科学の分野でこの現象のメカニズムはすでに紐解かれています。

というわけで、次は「言葉」と「脳」のつながりを掘り下げていきます。

「言葉」はどのように「脳」で処理をされているか?

以下の図のように、脳は部位ごとに機能が分かれています。

視覚に関わる機能を処理するのが「視覚野」、聴覚に関わる機能を処理するのが「聴覚野」というように、
人間がもつ五感は脳では処理する場所が別々に分かれています。


脳の部位の機能

では「言葉」はどこで処理されるかというと、「ウェルニッケ野」という部分になります。

視覚野、聴覚野、ウェルニッケ野が脳のどの部分に存在するかを確認すると、
聴覚野とウェルニッケ野は側頭連合野という部分にあり、視覚野は少し後ろ(視覚連合野と呼ばれます)にあります。

つまり、言語を処理するウェルニッケ野は聴覚野の近くに存在することが分かります。

 

次に、文書を読んでいるときの脳の各機能の動きについて解説をしていきます。
文書を読んでいるときに脳では以下の処理がされています。

①文字を目で見る
②脳内の視覚野で文字情報が認識される
③聴覚野で文字情報が音声として変換される(音韻表象される)
④ウェルニッケ野で音声が言語情報として処理される

この処理の流れを図で示すと以下のようになります。


文書を読んでいるときの処理の流れ

図に示す処理の流れによると、文書や文字は②で視覚情報として一旦処理されたあと、
③で音声に変換(音韻表象)た後に、④で言語として処理されます。


どうですか?

②→③の処理ってすごく無理している感じしませんか?
文字を目で見てるんだから、その情報を言語として処理しちゃえばいいじゃんって思いませんか?
でも脳はその処理があまり得意じゃないんです。

実は、「文書を黙読する」という行動は動物にとってすごく高度な作業なんです。

諸説あると思いますが、私は人類の歴史にそのルーツがあると思っています。

人類が誕生したのは400万年から300万年前と言われており、
そのころ人間は他の動物と同じように 「鳴き声」 で長距離の情報伝達を行っていました。

音の大きさが相手との距離を表し、音の高さが情報の種類を表していました。
危険な情報からできるだけ早く非難したり、仲間と集合するためには聴覚の方が重要で、
人間はもともと「聴覚優位」な動物であったと考えられます。

そして、「文字」の起源は紀元前3200年頃のシュメール人の「絵文字」だと言われており、
くさび形文字でおなじみのメソポタミア文明も紀元前3000年頃に栄えたと言われています。

文字が誕生して以来、人間は視覚から言語情報を得るという習慣を手に入れたわけですが、
人類の歴史で考えると、まだ10分の1(300万年分の3000年)程度の期間しか文字を使っていないことになります。


つまり、人間はまだ視覚からの情報を言語として処理することに慣れていないんです。

長々と歴史の話をしてしまいましたが、
要するに「目で文書を理解する」という行為に人間はまだ慣れていないので、
「耳から文書を理解する」という行動の方がよっぽど効率的だということになります。

「視覚は情報を司り、聴覚は思考を司る」

この言葉の意味が伝われば幸いです。

「音読」は聴覚をうまく使った効率的な勉強法 

法規の勉強をしていて、特に電気事業法の原文を眺めていると一気に眠気が襲ってくるという方はいませんか?

私のことです(笑)

 

先にお話しした通り、「文書の黙読」とは人間にとって非常に高度な技術です。

しかもそれが難しい内容であり、さらに文書から必要な情報を抽出するような作業が
追加されると、
脳は処理能力は一気に追いつかなくなります。

その結果、脳は勉強を停止するために、やる気をなくしたり、眠気を発生させ、
あっという間に眠りに落ちてしまいます。

こんなときは「黙読」から「音読」に切り替えるのが効果的です。

文字を視覚情報から聴覚情報に変換する作業(音韻表象)がなくなるので、脳の負担が減り、
それまで何度黙読してもしっくりこなかった文書が自然と頭に入るようになります。

しかも、口を使って発音することで、ブローカー野(運動性言語野)という部分が活性化し、
音読した文書は運動性記憶として脳で処理されます。

運動性記憶というのは、スポーツなどの体の動かし方に関する記憶で、
文字や映像よりも重要と判断され長期記憶として処理されます。

つまり、脳の負担が軽くなることで文書を理解しやすくなり、
しかもその情報は長期間保持されやすいという、
音読は一石二鳥な勉強方法となるのです。

また、電験の勉強していると見たことも聞いたこともない言葉がたくさん出てきます。

例えば「直流分巻電動機(ちょくりゅうぶんまきでんどうき)」なんて、
普通に生きていて絶対に出会うことのない言葉です。

だからこそ、新しい単語に出会ったら、一度声に出して発音してみるのが良いです。
新しい科目や単元の問題に挑戦するとき、とりあえず問題を一度声に出して音読してみてください。

そのあと答えをみたり、参考書で復習すると、音読した問題の文書が記憶に残っているので、
「さっき言ってたのはこれのことか!」と気付く機会が圧倒的に増えます。

勉強していて、効率が下がってきたと感じたら、音読に切り替えてみると、意外とスムーズに勉強が進む可能性があります。

ぜひ試してみてください。

聴覚を使ったその他の勉強法をご紹介

聴覚を使ったその他の勉強法として、
偏差値95の勉強法(粂原圭太郎さん著)から2件、そして私の禁断の勉強法を1件、ご紹介させていただきます。

声に出して覚える「ブツブツ法」

粂原圭太郎さんが行っている暗記のための勉強法です。
たくさん書くよりも、声に出して繰り返したほうが断然記憶に残ります。

この方法には粂原さんがポイントとしているところがあり、
以下の3段階に分けて繰り返すことで、記憶の定着率をあげています。

1.声に出して読む
2.耳をふさいで、声に出して読む
3.耳をふさいで、目を閉じて、声に出して読む

2と3は、いつもと違う状況にすることで脳が新鮮だと感じることを狙っていて、
一種の違和感がフックとなり、よりしっかりと暗記できるようになります。

復習を自動化する「セルフクイズ法」 

こちらも粂原さんが実際に使っていた方法です。
なかなか覚えられない言葉や、いつも間違える問題を復習するための勉強法になります。

ボイスレコーダに問題と答えを録音しておき、それを聞くという方法です。

問題を読んで、1拍(3秒程度)をあけてから答えを読みます。このセットを3回録音します。

3回録音というところがポイントで、間をおかずに繰り返したほうがより記憶に定着します。

後で録音を聴き、問題の後の1拍の間に、自分で答えを出すようにすることで
「セルフクイズ」が完成します。

 

禁断の「独り言勉強法」

最後は私がおすすめする(?)というか私が辞められない
禁断の「独り言勉強法」をご紹介します。

ネーミングがいかにも怪しさを醸し出していますが、私が中学校からずーっと続けている勉強方法です。

この勉強法は、暗記よりも情報の整理と論理的思考を養っていくのに効果的だと思っています。

ただ、周りに人がいると明らかに変な人だと思われるので、人道を捨てた禁断の勉強法です。
得られるものが多い分、失うものも多いもろ刃の剣です(笑)

勉強法の手順は以下のようになります。
(1)そこそこ分かった問題や事柄について考える
(2)先生役の自分と生徒役の自分を作る
(3)先生役の自分になって(1)を説明してみる(独り言で)
(4)生徒役の自分がよく分からないところを質問する(独り言で)
(5)先生役の自分が質問に答える(独り言で)
(6)生徒役の自分がその答えにさらに「なんで」と突っこむ(独り言で)

生徒役の自分が先生役の自分をどんどん困らせていくというのが、
この勉強法のポイントです。そして、やり取りは全て声に出します。
必ず「独り言」でプロセスを完結させます。

以下に例を示します。

(先生)「誘導機の同期速度は\(N_s=120f/p\)となります」
(生徒)「同期速度って何ですか?」
(先生)「誘導機の固定子つまり回転磁界の回転速度です」
(生徒)「\(p\)って何ですか?」
(先生)「固定子の磁極の数です」
(生徒)「なんで磁極の数が増えると速度が下がるんですか?極数が多い方が速くなりそうです」
(先生)「固定子の構造によって決まると思うのですが、次回までに調べておきます」

という感じのやり取りを「独り言」でやります。笑

最後の終わり方は、先生が生徒を論破しても、生徒が先生を困らせても、どっちでもいいです。

お題をどこまで深堀できるか、そして何が分からないかを整理するのが
この勉強法のポイントです。

深堀して到着したところが、電験三種や二種の問題の範囲を超えていれば合格。
そこまで達しなかったら、復習すべき項目として、また勉強を再開します。

問題を解くことや、参考書を読むのに疲れたら、「独り言勉強法」を使うようにしています。

椅子から離れて、ストレッチをしたり、ホワイトボードに殴り書きをしたり、
部屋の中を歩いたり、ときには外で散歩をしながらこの「独り言勉強法」を行います。

 

勉強以外にも仕事でも「独り言勉強法」を使っています。

職場で独り言を言い続けるのは、さすがにやばいおじさんになってしまうので、
通勤の徒歩移動中、人がいない道を選んでブツブツ言ったり、
大事なプレゼンがある前日に家で一人でブツブツ言ったりしています。

具体的な効果として、会社で勤めて10年で36件の特許を出していますが、
特許のアイディアはだいたい徒歩移動中の「独り言勉強法」により創作されています。

独り言を言わないと勉強をすることができない自分は、
脳に何らかの障害があるんだろうと思っていましたが、

脳科学について勉強をした結果、
脳にとって負荷が少ない効率的な勉強法を無意識に選択していた
ということが分かりました。

「視覚は情報を司り、聴覚は思考を司る」

ぜひ皆さんも聴覚を使った勉強法を試してみてください。

聴覚がもつ不思議な力 まとめ
〇人間にとって「文書の黙読」は高度な技術
 ・難しい内容の文書の黙読は脳の負担が大きく、脳は黙読をやめてしまう

〇「言葉」と「脳」のつながり
 ・目で見た文書や文字は「音」に変換された後、「言語」として処理される
  →文書を視覚情報から聴覚情報に変換(音韻表象)

〇「音読」は効率のいい勉強法
 ・資格情報から聴覚情報への変換がなくなり、脳の負担が減る
 ・口から音を発生することで運動性記憶(長期記憶)となる

〇具体的な勉強法(3個の実例を紹介)
 ・「ブツブツ勉強法」 偏差値95の勉強法(粂原圭太郎さん著)
 ・「セルフテスト勉強法」 偏差値95の勉強法(粂原圭太郎さん著)
 ・「独り言勉強法」 by KWG

最後に

今回は「聴覚がもつ不思議な力」について解説させていただきました。

「脳」と「言葉」のつながりを脳科学の観点で解説し、
聴覚を活用した効果的な勉強法を紹介しております。

「没頭した状態になる」「没頭した状態を持続する」方法は人に相性があるので、
今後も継続して「どうブロ」では具体的な勉強法を紹介していく予定です。

「没頭力を手に入れるための方法をすぐに知りたい」、「自身の勉強方法について相談したい」という方は、
以下のLINE「電どうLINE」を通じてメッセージをいただければご協力させていただきます。

まずはLINEの友だち追加を宜しくお願いします。

友だち追加