H28 問12


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解説

荷電粒子の運動に関する問題です。

荷電粒子を扱う場合、電磁気学と力学が絡んだ問題が出題されます。

電磁気としては、クーロン力かローレンツ力のどちらかが取り上げられます。

クーロン力の場合、重力や荷電粒子の加速度と絡めて、
運動方程式\(F=ma\)から速度や距離を求める問題が一般的です。

ローレンツ力の場合、ローレンツ力による等速円運動(またはらせん運動)に関する問題が一般的です。

とにかく、ローレンツ力がかかると、荷電粒子はぐるぐる回るということは押さえておきましょう。

ローレンツ力の式について少し解説します。
公式は以下のようになります。
$$\boldsymbol{F}=\boldsymbol{I}\times\boldsymbol{B}\Delta l$$
$$F=IB\Delta l sin\theta $$
ここで太字のアルファベットはベクトルを表します。
ベクトル同士の掛け算には内積と外積という2種類の計算があります。

\(\boldsymbol{A}\cdot \boldsymbol{B}= ABcos\theta\)という式の形が内積というもので、
2つのベクトルの有効な成分を抽出するために使われます。

ローレンツ力は\(\boldsymbol{A}\times \boldsymbol{B}= \boldsymbol{C}\)、\(C=ABsin\theta\)となるのですが、
2つのベクトルによる別方向への影響を表すために使われます。

ローレンツ力は後者の性質があります。ここでいう"2つのベクトルによる別方向への影響"というのが、
フレミングの左手の法則で表される力の向きになります。

もう少しだけローレンツ力の式を細かく吟味します。
式中に\(\Delta l\)という成分がついています。これが何を表しているかというと、
ローレンツ力は電流の大きさではなく、電荷の速度に比例するということがポイントになります。

電流は、以下の式で表されます。
$$I=\frac{dq}{dt}$$
ここで、\(q\)は電荷を表します。
つまり、電流とは電荷の時間変化量を表しています。電荷の速度ではありません。

ローレンツ力を適用するためには、電荷の速度が必要です。
そこで、ある小さい距離\(\Delta l\)の範囲の電荷の量として\(q/\Delta l\)を定義します。
この\(q/\Delta l\)の速度を考えると、以下のように式の変形ができます。
$$\frac{q}{\Delta l}v=\frac{q}{\Delta l}\frac{dl}{dt}=\frac{dq}{dt}=I$$
従って、
$$qv=I\Delta l$$
という関係式が得られるので、若干無理やりですが、電流と電荷の速度を結びつけることができます。

電気は目に見ませんが、電子という粒が運動をしていると考えると、
いろんな物理現象が定量化できます。

電気設備の管理とどう関係するんだと思う方もたくさんいると思いますが、
勉強を進めていくと、電気の本質を知ることに楽しさを感じるようになります。

参考にしていただければ幸いです。