H29 問05


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解説

直流の電気回路に関する問題です。
オームの法則のみで解を求めることが可能ですが、
回路に少し意地悪な仕掛けが含まれています。

回路図が網目のようになっており、回路の内部に電源が配置されています。
この状態でも計算を進めることはできるのですが、できればミス無く計算を進めたいので、
解説では、回路図の変形していく手順を説明していきます。

回路図を変形していくにあたり、以下の3つのポイントをおさえておきましょう。

  1. 電源は一番左に配置する
  2. 電源の-側を基準点(GND)とし、回路図の下側の配線は全てGNDになるように部品を配置する
  3. 電源からみて、回路図の上側の配線は、一番最初の分岐点に接続される部品を配置する

添付の画像をもとに回路図の変更を説明してきます。

まず基準点にあたる部分がどこかを調べます。
電源の-側で導線にあたる部分は全て同じ電位になるので、
図中A点からB点の範囲が基準点となります。

次に電源から最初の分岐点を探します。
電源に接続される20Ωの後ろで最初の分岐点があるので、この部分を点Oとします。

ここまでできたら、回路図の変形を行います。

まず、点Oと基準点の間にある電源と20Ωを回路図の一番左に配置します。

次に、点Oにあたる部分を回路図の上側の配線にします。
回路図の上側の線として適当な長さの線を引いてください。

次に、基準点にあたる部分を回路図の下側の配線にします。
回路図の下側の線として適当長さの線を引いてください。
そして、下側の線の適当な点Aと点Bを配置してください。

点Aと点Bの位置を決めたら、元の回路図に戻り、
点Aと点Oの間に含まれる素子を探し、その素子を作成中の回路図の上側の線と点Aの間に配置してください。
点Bについても同様の作業を行い、回路図の上側の線と点Aの間に素子を配置してください。

これで回路図の変更は完了です。
よく見る電気回路の形になっているはずなので、回路の見通しが容易になったと思います。

しかし、元の回路図を見返すと、5Ωがまだ残っていますね。
この抵抗も変形した回路図に描いてみます。
点Aと点Bの間に接続してみると、基準点の線に並列にこの抵抗が接続されることが分かります。

導線に抵抗が並列に接続されるとどうなるか?
並列回路の電流分岐は抵抗の逆比で決まるので、導線(0Ω)にどんな抵抗を接続しても、
電流は全て導線に流れます。
従って、この5Ωは無視してかまいません。

このように回路図の変形を行うと、解説の最初に少し触れた"少し意地悪な仕掛け"を簡単に見破ることができます。

では、回路図の変形は完了したので、最後に20Ωに流れる電流を求めます。

10Ωの抵抗が2つ並列に接続されてます。
同じ抵抗を2個並列につなぐと抵抗値は半分になるので、この部分の合成抵抗は5Ωになります。

全体の抵抗は20Ω+5Ω=25Ωとなり、電圧は25Vなので電流は1Aが得られます。

回路が複雑になってくると、計算の見通しが立たず、複雑な計算手順を選択してしまうことがよくあります。
回路をできるだけ簡単な形に組みなおすテクニックは計算の手間を減らす効果があります。

特にダイオード、トランジスタ、オペアンプなどを含む電子回路の計算では当たり前のようにこのテクニックが用いられます。
(電子回路の専門書が難しく感じるのは回路図の変形に関して、前もって解説がされていないからだと私は思っています)

回路図を変形するテクニックが習慣化していくと、電気回路の計算の苦手意識も少なくなっていきます。
積極的に挑戦してもらえると幸いです。