H27 問13


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解説

トランジスタの電力増幅回路に関する問題です。

電子回路を熟知してないと分からない問題です。

オーディオアンプなどの電子工作を趣味にしている人は当然の知識かもしれませんが、
私を含めて最近のおじさん世代はそういう趣味を嗜む人はかなり少なくなっているので、
ただの難しい問題だと思ってもらっていいです。

電子回路の教科書見ても、A級、B級アンプくらいの情報しか書いてありません。
C級アンプなんて、2行くらいそういうものがありますよって書いてあるくらいです。

D級アンプはパワエレの分野で最も普及している回路方式なので、
この問題とは関係ないですが、一番よく知られているんじゃないかと思います。

前置きはこのぐらいにして、解説に移りたいと思います。

(1)コレクタ損失とは、コレクタ電流とコレクタ・ベース間電圧との積である。→✖

この記述が間違えです。

コレクタ電流とコレクタ・エミッタ間電圧との積

が正解です。

すごく定性的に説明します。トランジスタの動作を蛇口から出る水に例えます。

ベース電流が蛇口の回し具合です。
コレクタ電流というのが蛇口から出る水です。
コレクタ・エミッタ間電圧は蛇口の開き具合です。

水の量を蛇口の開き具合で決めますが、
蛇口の開き具合で配管からの水をせき止めて、ほしい水の量を手に入れます。

このとき蛇口では水をせき止めているので、配管から流れる水の速度を抑えるための仕事をしています。
この仕事とは、配管を流れる水からエネルギーを奪う作業のことを表しています。

トランジスタでも同様に、
必要なコレクタ電流を得るためにコレクタ・エミッタ間電圧が決まり、
電流×電圧で決まる電力がトランジスタで発生する損失となり、コレクタ損といいます。

(2)コレクタ損失が大きいと、発熱のためトランジスタが破壊されることがある。→〇

記述のとおり、破壊されることがあります。
トランジスタの放熱設計は電力回路の設計における重要な要素の一つです。

(3)A級電力増幅回路の電源効率は、50%以下である。→〇

この問題では、A級、B級、C級という言葉が出てきます。
これらの違いを簡単に説明すると、トランジスタの動作点の違いを表しています。

A級は入力信号\(V_{BE}\)に対して出力信号\(i_C\)の線形性がよい部分を動作点として選びます。

先ほどの蛇口の例に戻ると、
蛇口を10°回転したら1l/minの水が出て、20°回転したら2l/minの水が出る
という感じで蛇口の回転量と水の量が比例する状態を線形性がよいといいます。

一方で、蛇口の開き量に応じて水をせき止めることになるので、蛇口で発生する仕事が大きいです。
つまり、コレクタ損が大きくなります。

結果、A級電力増幅回路はコレクタ損が大きく電源効率は50%以下となります。
直流信号を制御する場合、効率は50%、正弦波を制御する場合、25%となります。

(4)B級電力増幅回路では、無信号時にコレクタ電流が流れず、電力の無駄を少なくすることができる。

B級の動作点は\(V_{BE}=0\)付近を使用します。
従って、無信号時の入力信号\(V_{BE}\)は0Vとなり出力信号\(i_C\)も0Aとなるので、
無信号時のコレクタ損はほぼ0となります。

(5)C級電力増幅回路は、高周波の電力増幅に使用される。→〇

C級電力増幅回路の動作点は\(V_{BE}<0\)に設定されます。

0よりも小さい電圧を動作点に設定すると、波形の再現性はあまり気にしません。
決まったタイミングでパルスが出ることが目的となります。

入力信号の波形を再現する作業はトランジスタの後ろの回路に任せて、
期待する周波数の信号を増幅することに徹するのがC級電力増幅回路の役割となります。

ということで、トランジスタの電力増幅回路について、
小難しい計算式や専門的な言葉はできるだけ使わずに解説してみました。

この解説だけでトランジスタ回路の動作をするのは難しいと思いますが、
他のテキストと合わせて、この記事を読んでもらうことで、理解を深めることには役立つと思います。

参考になれば幸いです。