H27 問12


<画像クリックで拡大表示>
問題はこちら

解説

ブラウン管の原理に関する問題です。

電気の知識が2に対して、力学の知識が8くらい必要な問題です。

空間を移動する電子が電界によりその軌道が変えるということを問題を通じて理解していきましょう。

では、電子の運動を偏光板中と偏光板通過後の2つに分けて解説していきます。

(1)偏光板中の電子の運動

偏光板中では、電子は\(x\)方向からの電界の作用を受けます。

この電界は電子の進行方向に対して垂直な方向に作用します。
従って、電子の進行方向の速度は変わりませんが、進行方向とは別の方向にクーロン力が発生するため、
電子の運動の軌道が変化します。

このイメージを持ったうえで、電界による電子の運動を考えていきます。

まず、偏光板を通過するのに必要な時間\(t_0\)を求めます。
$$l=vt_0\,\rightarrow\,\,t_0=\frac{l}{v}$$

次に、電界による電子の運動を運動方程式で表します。
運動方程式とは、\(F=m\alpha\)という力\(F\)と物体の加速度\(\alpha\)の関係を表した式です。
$$F=eE=m\alpha\,\rightarrow\,\,\alpha=\frac{eE}{m}$$

以上の計算から、偏光板通過中に電界により発生する電子の\(x\)方向の速度\(u\)を導出することができます。
加速度と速度の関係より\(u=\alpha v_0\)という関係式が成り立つので、速度\(u\)は以下のようになります。
$$u=\alpha t_0=\frac{eE}{m}\cdot\frac{l}{v}=\frac{elE}{mv}$$

繰り返しますが、この速度\(u\)はもともとの電子の運動に対して垂直な方向に発生する速度です。
もともとの電子の速度\(v\)は変化せず、2つの速度\(v\)と\(u\)のベクトル和が電子の速度になるということを押さえておきましょう。

(2)偏光板通過後の電子の運動

まず、発光面に到達するまでの時間\(t_1\)を求めます。
この時間\(t_1\)はもともとの進行方向の成分だけを考えればいいので、速度\(v\)のみを使います。
$$d=vt_1\,\rightarrow\,\,t_1=\frac{d}{v}$$

発光面に到達するまでの時間が分かったので、次はこの時間の間に\(x\)方向にどれだけ電子が移動したかを導出します。
ここでは\(x\)方向の速度成分\(u\)について考えます。
$$X=ut_1=\frac{elE}{mv}\cdot\frac{d}{v}=\frac{eldE}{mv^2}$$

となり、偏光板中の電界により電子の軌道が変化し、発光面上で\(x\)方向に\(X\)だけシフトすることが分かりました。

今はほとんど使うことが無くなりましたが、アナログのオシロスコープもこの原理を使って波形を表示しています。

電気回路だけでなく電子の物理現象を使って計測器が作られていたということが分かると、
一昔前のエンジニアってすごいんだなぁと私は感じます。

クーロン力の役割が分かるいい問題なので、苦手意識のある方の参考になれば幸いです。