H28 問17


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解説

平行板の静電容量に関する問題です。

設問(b)は難解ですが、図説と補足(水に例えてみる)を作ってみましたので、
図を見ながら理解を深めていただければ幸いです。

それでは、解説に移ります。

設問(a)

平行板の面積と電極との距離が定められているので、平行板の静電容量の公式を使って、
まず、それぞれの空気コンデンサの静電容量を求めます。
$$C_1=\varepsilon_0\frac{A_1}{d}=8.85\times10^{-12}\,\rm{F}$$
$$C_2=\varepsilon_0\frac{A_2}{d}=8.85\times10^{-11}\,\rm{F}$$

次に、コンデンサに蓄えられた合計の電荷を求めます。
コンデンサの電圧と電荷の関係式\(Q=CV\)を用いて、
$$Q=(C_1+C_2)V_0=(8.85+0.885)\times 10^{-11}\times 10^3=9.7\times 10^{-8}\,\rm{C}$$
となります。ここで、電源から見たとき、\(C_1\)と\(C_2\)は並列接続されるので、
合成の静電容量は\(C=C_1+C_2\)で表せることを押さえてきましょう。

設問(b)

設問(b)では空気コンデンサ\(C_2\)の電極間距離を変化させたときに生じる火花放電の
絶縁破壊電圧を求めます。

添付画像の左ページの下部に火花放電が発生するまでの\(C_1\)と\(C_2\)の状態変化について
図説を設けています。

「図(2)\(x\)を増やす」の部分について解説します。

空気コンデンサ\(C_2\)の電極間距離\(x\)を広げていくと\(C_2\)の静電容量が小さくなります。
このとき\(Q=CV\)の関係式より、\(Q\)を一定に保つように\(C_2\)の静電容量が下がる分だけ、電圧が上昇します。

しかし、空気コンデンサ\(C_2\)は空気コンデンサ\(C_1\)と接続されているため、
それぞれのコンデンサの電圧は同じ(同電位)になるようにクーロン力が発生します。

その結果、空気コンデンサ\(C_2\)内の電荷が空気コンデンサ\(C_1\)に移動し、
空気コンデンサ\(C_1\)の電圧が上昇します。

従って、空気コンデンサ\(C_2\)の電極間距離\(x\)を広げていくと、
結果的に空気コンデンサ\(C_1\)の電圧が上昇していきます。

\(x\)を大きくし続け、空気コンデンサ\(C_1\)の絶縁破壊電圧に達すると、
電極と床の間で火花放電が発生します。(図(3)火花放電が発生)

図(3)火花放電が発生の回路図をもとに、方程式を立てます。

火花放電発生時の空気コンデンサ\(C_1\)に蓄えられた電荷を\(Q_1’\)、
空気コンデンサ\(C_2\)に蓄えらえた電荷を\(Q_2’\)、静電容量を\(C_2’\)とし、
静電容量\(C_2’\)を求めます。

それぞれのコンデンサの電圧のつり合いと、合計電荷\(Q\)は不変であることから、
$$V=\frac{Q_2′}{C_2′}=\frac{Q_1′}{C_1}=\frac{Q-Q_2′}{C_1}$$
という関係式が得られます。

この式から、\(Q_1’\)は使わずに、\(Q_2’\)を表す式を作ります。
$$\frac{Q_2′}{C_2′}=\frac{Q-Q_2′}{C_1} \rightarrow Q_2’=\frac{C_2′}{C_1+C_2′}Q$$

一方、火花放電が発生するときの空気コンデンサ\(C_2’\)の電極間距離\(x\)は、問題で定められているので、
$$C_2’=\varepsilon_0\frac{A_2}{x}=\frac{1}{3}\times 8.85\times 10^{-11}\,\rm{F} \rightarrow C_2’=\frac{10}{3}C_1$$
と表すことできます。

先に得た2つの式を使って絶縁破壊電圧を求めます。
$$V=\frac{Q_2′}{C_2′}=\frac{1}{C_2′}\frac{C_2′}{C_1+C_2′}Q=\frac{1}{C_1+C_2′}(C_1+C_2)V_0$$
$$V=\frac{1}{C_1+\frac{10}{3}C_1}(C_1+10C_1)V_0=\frac{3}{13C_1}\times11C_1\cdot 1000$$
$$\frac{33}{13}\times 1000 = 2.5\times 10^{3}\,\rm{V}$$

2つのコンデンサの電圧が同じになること、
電極間距離\(x\)が変化しても合計電荷\(Q\)は変わらないこと、
この2つがポイントです。

図説の理解をサポートするために、補足資料として設問(b)を水に例えた解説を
添付画像の右ページに記載しています。

一読いただき、理解深めるためのお役に立てば幸いです。