H29 問17
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解説
磁気回路に関する問題です。
磁気回路では以下の2つのポイントをおさえておきましょう。
- 電流とコイルの巻き数が磁気回路の磁束を決める
- 磁気回路中の磁束はどこでも同じ大きさである
1に関して補足をすると、磁束がインダクタンスや電流を決めるのではなく、
まず電流が存在して、その近くにインダクタンスとなりうるもの(磁性体や導体)があると、磁気回路ができる。そしてその磁気回路の磁気の大きさが磁束となります。
回路方程式を立てるために以下の4つの関係式を理解しておく必要があります。
1)\(\Phi = LI\) → \(I= \Phi/L\)
2)\(L=\mu S/l\)
3)\(\phi = BS\)
4)\(B=\mu H\)
ここでは各関係式の説明は割愛しますが、少なくとも1)と2)の関係式を覚えておかないと、
磁気回路の回路方程式を立てることができないということは覚えておいてください。
方程式が立てられないと手も足も出ません。
磁気回路の問題が解けるかどうかは、回路方程式が立てられるかどうかでほぼ決まります。
というわけで、問題の図より回路方程式を立てると以下のようになります。
$$NI=\frac{l_1}{\mu_{r1}\mu_0 S}\Phi+\frac{\delta}{\mu_0 S}\Phi+\frac{l_2}{\mu_{r2}\mu_0 S}\Phi+\frac{\delta}{\mu_0 S}\Phi$$
この式の第一項は鉄心1の要素、第三項は鉄芯2の要素、第二項および第四項はエアギャップの要素を表しています。
この式が立てられれば、磁気回路の問題は8割がた解けたといっても過言ではありません。
苦手な方はがっかりする必要はありません。
この問題の解説や補足を読んで磁気回路のイメージができるようになれば、
自然と問題が解けるようになります。
回路方程式ができれば、あとは式変形をして、各要素を(空気の)磁界の強さに置き換えます。
$$NI=l_1\frac{H_0}{\mu_{r1}}+\delta H_0+l_2\frac{H_0}{\mu_{r2}}+\delta H_0$$
この式より、鉄心1での磁界の強さは空気の1/2000、鉄心2での磁界の強さは空気の1/1000となり、
選択肢(2)のグラフが解となります。
設問(b)では、上記の式に\(I=1A\)、\(H_0=2\times 10^4 A/m\)を代入し、添付画像の左のページ下部用に式変形を進めることで、\(N=44\)という解が得られます。
補足では磁気回路の考え方について解説しています。
ポイントはコイルが作る磁束は電流と巻き線で決まることです。
そして、鉄心があると、その磁束の多くが鉄心の中を通るようにあります。
(透磁率とは磁束を透過するという意味で、透磁率の高い物質はその中に磁束を集めようとします)
しかし、鉄心にエアギャップを設けると、鉄心を含む経路の磁束が減り、鉄心外部に漏れだす磁束が増えます。
このような磁束の振る舞いから、
- 電流(と巻き線)は磁束を供給するためのポンプ
- インダクタンスの逆数が磁束の通しやすさを決める抵抗(磁気抵抗)
と考えると磁束の振る舞いを表現しやすくなります。
このルールをもとに登場したの磁気回路という概念です。
磁気回路のようにあまりなじみのない問題は、
問題を解くことよりも吟味することのほうがはるかに大切です。
磁気回路とは、磁束というよくわからないものを
イメージしやすいように提案されたルールであり概念です。
作ってみたけど、人気がないことがダメなわけで、理解できないことに落胆する必要はありません。
こんな概念を作った人の責任です。(ちょっと言い過ぎですが)
無理に解き方を暗記する必要はありません。
イメージを体に染み込ませることのほうがはるかに重要で価値がある行為です。
この添付資料の補足を読んでみたり、類似問題を解いてみて、
磁気回路のイメージを身につけてください。
自然と問題が解けるようになります。
そして何より、磁気というものイメージがよりはっきりと身に付き、
問題を解くことが楽しくなるはずです。