H29 問12


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解説

紫外線ランプ(蛍光灯)の原理に関する問題です。

電気に関するキーワードは、"放電"、"プラズマ"、"電子による励起"となります。
実際の問題文では、放電以外は言葉は使われず、解説のみ記載されています。

全体の説明は添付の画像を参照いただくとして、
ここでは問題で取り上げられている言葉について解説します。

平行板や電池などの電極のうち、+側を陽極、-側を陰極と言います。

放電現象は、絶縁された空間(空気や金属以外の物質(ゴム、樹脂、木など)に電流が流れることです。(放電現象を解説する際は、電流よりも電子の流れで説明されることが多いです。)

平行板でも放電現象は起こりますが、電極間の距離が短い、印加される電圧が非常に高いなど、
放電を発生させる条件が難しく、安定した放電状態を長時間保つことが難しいです。

紫外線ランプ(蛍光灯)は安定した放電現象を長時間保つための工夫がいろいろされています。

平行板でも電極間で電界は発生するのですが、陰極から飛び出した電子は電極間内の浮遊する原子(空気)にぶつかり、そのスピードは制限されます。

紫外線ランプ(蛍光灯)では、電極がガラス管で密閉され、しかも内圧をさげることで真空に近い状態になっています。

真空に近いということはガラス管内の原子の量が少ないので、余計な原子ぶつかる確率が下がります。

さらに、ガラス管内には希ガスが封入されています。希ガスとはヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)などの原子で、原子周期表の一番右側の原子のことです。

希ガスは原子の周りの電子がうまく結びついていて、他の原子よりも安定した状態(イオンになりにくい)という特性があります。

ガラス管内に希ガスがあると、陰極から飛び出した電子は希ガスにぶつかるのですが、
このとき希ガスは"プラズマ"という状態に変わります。

プラズマとは原子の周りがちょっとだけ原子から離れた状態で、
この状態になると、希ガスの電子は金属のまわりの電子のように働きます。
つまりプラズマ化した希ガスは導体のように働きます。

ガラス管内に希ガスのプラズマがたくさんできると、いろんなところに導体ができるようになります。電極間には電界が発生しているので、プラズマの周り電子が陽極に向かって加速されます。

これらの電子が途中で希ガスやほかの原子にぶつかることがありますが、
プラズマのおかげで平行板に比べてたくさんの電子が電極間中に存在します。

その結果、電子は十分な速度をもって陽極に到達することができ、
安定した放電現象を長時間持続することが可能になります。

しかし、放電現象がおきても、ガラス管から光は見えません。

そこで水銀(Hg)の登場です。
水銀は電子がぶつかると紫外線を放出します。

少し細かく解説すると、水銀が外部からエネルギーをもらい、エネルギーが高い状態に一時的に変化します。しばらく時間がたつともとのエネルギー状態に戻ります。
このとき、余ったエネルギーを外部に放出します。これが紫外線です。

ここで、エネルギーが高い状態に変化することを"励起"と言います。

半導体の動作や、電気的な現象を解説するときよく出てくる言葉です。
電験三種で登場することはないですが、専門書ではよく出てくる言葉なので覚えておいて損はないと思います。

水銀のおかげで紫外線という光がガラス管から発生するのですが、
紫外線は目では見えないので、人は紫外線の光を感じることができません。

そこで、蛍光塗料をガラス管に塗ることで、可視光(目で見える光)に変換します。

以上により、ガラス管内の放電現象を使って蛍光灯を完成させることができます。

解説が長くなってしまい恐縮ですが、
添付画像を見ながら詳しく知りたい部分をかいつまんで読んでいただければ幸いです。