R01 問13


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解説

制御理論に関する問題です。

制御理論の基本の基であり、
実用レベルではこれだけ抑えておけば制御理論のプロだといっても過言ではない、
負帰還増幅回路(ネガティブフィードバック)に関する問題です。

フィードバックという言葉を最近よく聞くようになりましたが、
制御理論のネガティブフィードバックが言葉の由来です。

ポジティブフィードバックという言葉もあるのでほんとは使い分け合いといけません。
でも制御屋さんもネガティブフィードバックを単なるフィードバックと言うで気にしなくていいです。

負帰還増幅回路とは、増幅率が高い増幅回路を安定な状態で使うための制御手法です。

語りだすとキリがないので、
以下では、負帰還増幅回路全体の増幅率の計算と、負帰還増幅回路のポイントについて解説します。

負帰還増幅回路全体の増幅率

問題についている図を添付画像の上部に記載しています。

これはブロック線図というもので、制御系(制御を行うシステム全体)のインプットとアウトプットを表したものです。

ブロック線図に慣れるにも訓練が必要です。
とにかく、電気回路とは違うということと、時間という概念は無視するということを覚えておいてください。

信号を伝えるための経路はありますが、伝達にかかる時間は見て見ぬふりをします。

ということで、時間のことは無視して負帰還増幅回路のブロック線図を解説していきます。

ブロック線図の式変形を行うにあたり、添付画像のように白い丸(○)の後ろに
\(v’\)というパラメータを追加してください。

白い丸(○)はデータの合流と処理を表していて、
ここでは片方のデータを+(+1倍)、もう一方のデータを-(-1倍)として重ね合わせる
ということを意味しています。

+側のデータは\(v_i\)となります。

次にー側のデータが何かを探るために矢印をさかのぼっていくと、
まず\(\beta\)があり、
さらにさかのぼっていくと、\(A_v\)があり、
さらにさらにさかのぼっていくと、\(v’\)を介して白い丸(〇)に戻ってきます。

はい、ここでブロック線図の意味が分からなくなります。(私はここでハマりました)

一旦落ち着きます。\(\beta\)の上流に黒い点があります。
この黒い点はデータの分割を表しています。
つまり、\(A_v\)の後ろのデータはこの黒い点で2つに分けられることになります。

分岐後のデータの一つは\(v_0\)なので、\(\beta\)にも\(v_0\)がインプットされます。

おいおい、
分岐したら電流が半分になるだろうとか、
\(v_0\)が分からないのに\(v_i\)側にもってきてたら\(v_0\)がどんどん変化しちゃうだろうとか、
いろいろお叱りの言葉が出てくると思います。(私はそうでした)

今一度、この解説の最初の言葉を思い出してください。
ブロック線図は電気回路を表しているわけじゃありません。
そして、時間という概念は無視します。

なので、分岐してデータの状態が変わるとか、出力を入力側に戻したら出力がどんどん変わるとか、
気にしなくてもいいんです。

というわけで、\(v_0\)→\(\beta\)→白い丸(〇)という経路でデータが伝達されます。
各ブロックごとの値は乗算されながら伝達されるので、
白い丸(〇)のー側には\(\beta v_0\)が伝達されます。

以上より\(v’\)は、
$$v’=v_i-\beta v_0$$
という関係が得られます。
さらに\(v’\)→\(A_v\)→\(v_0\)という経路から、
$$v_0=A_v v’$$
という関係も得られます。

2つの式から、
$$v_0=A_v(v_i-\beta v_0) \rightarrow A_v \beta v_0+v_0=A_v v_i$$
$$v_0=\frac{A_v}{1+A_v \beta}v_i$$
という関係が得られます。

この式が負帰還増幅回路の増幅率(ゲイン、利得という言い方もします)になります。

この式を吟味して、式からその性質を理解するには制御理論の知識がもう少し必要になります。
(というか現段階で私に簡単にまとめる能力がありません)

ということで、式だけ覚えておいてください。
負帰還増幅回路の式がこんな形になるということを覚えておくだけで、何とかなることが多いです。

負帰還増幅回路のポイント

(1)増幅率(ゲイン、利得)は小さくなる。
(2)帯域(増幅率が一定となる周波数の範囲)は広くなる
(3)増幅率は、帰還率\(\beta\)で決まり、増幅率に依存しない
(4)(2)と(3)により制御系の動作が安定する

増幅回路がもともと持っている増幅率を犠牲にして、
制御系を安定にするというのが負帰還増幅回路の特徴です。

制御理論は敷居が高い割に、小難しいことを同じように書いてある専門書が溢れかえっています。
(と私は思っています。)

今後も少しずつではありますが、制御理論の理解を助けるような解説を増やしていこうと思っています。
苦手意識のある方の助けになれば幸いです。