R01 問08


<画像クリックで拡大表示>
問題はこちら

解説

直流と交流の複合回路に関する問題です。

重ね合わせの理を使って直流成分と交流成分に分けてしまえば、
回路はシンプルになります。

直流成分

添付画像の上部の中央部分の回路が、直流成分の等価回路となります。

ポイントはコンデンサ部分の抵抗は直流では開放(\(R_C=\infty\))として扱うことです。
コンデンサ部分が開放となれば、直流電源と抵抗が接続されているだけなので、
この部分の電流\(I_d\)は
$$I_d=\frac{E_d}{R}=\frac{100V}{10\Omega}=10A$$
となります。

交流成分

添付画像の上部の右部分の回路が、交流成分の等価回路となります。

まず合成インピーダンス\(Z\)を求めます。
$$Z=\frac{R\cdot jX}{R+jX}=\frac{RX^2+jR^2X}{R^2+X^2}=\frac{10\cdot 10^2+j10^2\cdot 10}{10^2+10^2}=5(1+j)$$
$$|Z|=5\sqrt{1^2+1^2}=5\sqrt{2}$$
合成インピーダンスの絶対値が分かれば、電圧実効値から電流実効値を求めることができます。
(絶対値の計算で振幅と絶対値を求めることができますが、位相差については分からないので気を付けてください〉

$$|I_a|=\frac{|V|}{|Z|}=\frac{100}{5\sqrt{2}}=10\sqrt{2}A$$

直流成分と交流成分の合成

直流成分と合流成分から全体の実効値を求めていくのですが、全体の実効値は以下の式で求めることができます。

$$(交流実効値)=\sqrt{(直流電流)^2+(交流電流実効値)^2}$$

先に求めた\(I_d\)と\(I_a\)をより、
$$I=\sqrt{10^2+(10\sqrt{2})^2}=\sqrt{100+200}=10\sqrt{3}=17.3A$$
となる。

補足として、ここで用いた実効値の計算のための公式について解説します。

実効値はきちんと定義があります。
周期\(T\)の関数\(f(t)\)の実効値は、以下のように定義されています。
$$F_{rms}=\sqrt{\frac{1}{T}\int_0^T f(t)^2dt}$$

この式の形は\(f(t)\)の二乗平均平方根を意味しています。
正弦波のように+と‐に変化する周期的な関数は平均すると0になります。
二乗平均平方根という形で計算をすると、-の値も全て+になるので、必ず0以外の値が得られます。

電気回路において、電流や電圧の二乗平方根すなわち実効値は、
消費電力という物理的な役割を果たします。

直流成分\(I_d\)、交流成分\(I_asin\omega t\)とし、電流\(i(t)=I_d+I_asin\omega t\)の実効値を導出していきます。
(すみません。これ以降は定性的な解説をすることができないので、ゴリゴリと計算をしていきます。)

$$I_{rms}=\sqrt{\frac{1}{T}\int_0^T i(t)^2dt}=\sqrt{\frac{1}{T}\int_0^T (I_d+I_asin\omega t)^2dt}$$
$$=\sqrt{\frac{1}{T}\int_0^T (I_d^2+2I_dI_asin\omega t+I_a^2sin^2\omega t)dt}$$
$$=\sqrt{\frac{1}{T}\left(\left[I_d^2t\right]^T_0+\left[-\frac{2}{\omega}I_dI_acos\omega t\right]^T_0\right)+\frac{1}{T}I_a^2\int_0^T \frac{1-cos 2\omega t}{2}dt}$$
$$=\sqrt{\frac{1}{T}\left(I_d^2T+0\right)+\frac{1}{T}\frac{I_a^2}{2}\left(\left[t\right]^T_0-\frac{1}{2\omega}\left[sin 2\omega t\right]^T_0\right)}$$
$$=\sqrt{I_d^2+\frac{1}{T}\frac{I_a^2}{2}\left(T-0\right)}$$
$$I_{rms}=\sqrt{I_d^2+\left(\frac{I_a}{\sqrt{2}}\right)^2}$$

以上、積分の計算を行うと、右辺は2つの項にまとまります。
1つ目の項は直流成分の寄与を表しており、2つ目の項は直流成分の寄与を表しています。

ここでポイントとなるのは2つ目の項で、
直流成分に比べて振幅の\(1/sqrt{2}\)倍が全体の実効値に影響することが分かります。
この部分がまさに交流の実効値を表しています。

この計算により、直流成分と交流成分を含む回路の実効値は以下の関係が成り立つことが証明できました。
$$(交流実効値)=\sqrt{(直流電流)^2+(交流電流実効値)^2}$$

電験三種の問題でわざわざ実効値の定義まで掘り下げる必要はないと思いますが、
パワエレの設計に関わる方は、パルス電流から実効値を計算する際に、このような計算を行います。

電験二種以上を目指している方は、計算できるといいことがあるかもしれません。
参考になれば幸いです。