H29 問02
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解説
平行板コンデンサに関する問題です。
コンデンサA、B、Cの静電容量、電界の強さ、静電エネルギーを順に導出していきます。
導出の過程で、C=\varepsilon S/d、E=V/d、J=\frac{1}{2}CV^2という3つの公式を使います。
まず、コンデンサA、B、Cの静電容量を求めます。ここでは、コンデンサAの静電容量C_Aを基準に、
C_B、C_Cとの大きさの関係を求めます。
静電容量の公式に頼らなくても、静電容量はコンデンサの面積に比例し、極板間の距離に反比例する
ということを理解していれば、
C_BはC_Aの2倍、C_CはC_Aの半分になるということが分かり、
C_B = 2C_A、C_C=C_A/2を導出することができます。
次に、電界の強さが同じになるように各コンデンサに電圧を印加するという条件から、
各コンデンサの電圧を求めることができます。
静電容量と同じく、ここでもコンデンサAの電圧V_Aを基準に、V_B、V_Cとの大きさの関係を求めます。
E=V/dすなわちV=Edの関係式より、V_B=V_A、V_C=2V_Aとなります。
ここで、コンデンサの誘電率、静電容量、面積によらず、電界は極板間の距離のみで決まるということを押さえておきましょう。
静電容量と電圧が分かれば、各コンデンサの静電エネルギー(蓄えられた電荷が持つエネルギー)を求めることができます。
J=\frac{1}{2}CV^2の関係より、静電エネルギーの総量はJ_{ALL}=\frac{5}{2}C_AV_A^2となります。
ここまでが、回答の半分です。
次に全コンデンサを並列接続し、静電エネルギーがどのように変わるかを導出します。
コンデンサの並列接続では、以下3つのポイントを押さえておきましょう。
- 各コンデンサの静電容量の和が全体の静電容量となる
- 全コンデンサで蓄えられる電荷の総量は接続前と変わらない
- 全コンデンサの電圧は同じ値になる
この問題ではポイント1,2を用いて、並列接続後の静電エネルギーを導出します。
まず、全体の静電容量C_{ALL}は各コンデンサの静電容量の和で表せるので、
C_{ALL}=C_A+C_B+C_C=\frac{7}{2}C_Aとなります。
次に電荷の総量を求めます。各コンデンサの電荷はQ=CVの関係から求められます。
さらに、ポイント2より、接続前後で電荷の総量は変わらないので、
接続前の各コンデンサの静電容量と電圧で電荷の総量Q_{ALL}は求められます。
Q_{ALL}=C_AV_A+C_BV_B+C_CV_C=4C_AV_Aとなります。
J=\frac{1}{2}CV^2はJ=\frac{1}{2}\frac{V^2}{Q}と表すことができるので、
先に求めた全体の静電容量C_{ALL}と電荷の総量Q_{ALL}より、
J_{ALL}’=\frac{1}{2}\frac{V_{ALL}^2}{Q_{ALL}}=\frac{16}{7}C_AV_A^2となります。
以上より、接続後の静電エネルギーの倍率は、
\frac{J_{ALL}’}{J_{ALL}}=\frac{16/7C_AV_A^2}{5/2C_AV_A^2}\sim 0.91
となります。
平行板コンデンサに関する公式が全て登場する問題です。
何度か解けばそれぞれの公式の役割をつかむことができると思いますので、是非挑戦してみてください。
問題を解いていって、なぜ電荷の量が変わらないのに、エネルギーは小さくなるんだろうと感じるかもしれません。
(私は不思議に思いました)
補足として、静電エネルギーが小さくなるイメージをつかむための図説をつけてみました。
定性的なイメージだけですが、理解を深めるためにお役に立てば幸いです。