H28 問05


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解説

直流の電気回路に関する問題です。

電源が複数接続されており、重ね合わせの理やキルヒホッフの法則を使って導出すると、
結構時間がかかります。

ミルマンの定理を知っていると、スムーズに解を導出することが可能です。
リンク@優しい電気回路さん

しかし、テブナン普及委員会に属している私は、あえてテブナンの定理で解説を行います。
(ミルマンの定理は使用頻度が低すぎて、私の場合、使いたいときには忘れてます。)

というわけで、添付画像の上部右側の等価回路を使って、計算を進めていきます。

(1)\(R_{ab}\)を求める

端子a-b間の合成抵抗\(R_{ab}\)を求めます。
電源は無視して、抵抗\(r=0.1\Omega\)が4つ並列に接続されていると、考えればよいです。

同じ抵抗を並列接続する場合、(合成抵抗)=(単体の抵抗値)/(接続数)となります。
ということで、\(R_{ab}=\frac{1}{40}\Omega\)となります。

(2)\(V_{ab}\)を求める

ここでは複数電源が接続された回路から\(V_{ab}\)を求めることになります。
重ね合わせの理を使って、導出を進めないといけないので、\(R_{ab}\)の導出に比べて計算が複雑になります。

回路の対称性をうまく利用して計算を進めていきます。

添付画像の中央右側のように、回路の各枝をA、B、C、Dと定義し、
まず枝Aのみに電源が接続されている回路を考えます。

電源がつく枝Aの電流を\(I\)としたとき、枝B、C、Dでは電流が3等分され、
それぞれに\(I/3\)の電流が流れます。
また、枝Aの電流\(I\)と枝B、C、Dの電流\(I/3\)は向きが逆になることも押さえておきましょう。

次に電源が枝Bにつく場合、枝Cにつく場合、枝Dにつく場合と
さらに3パターンの回路を考える必要がありますが、
まず枝Aに流れる電流だけに着目します。

枝Aはここで挙げる3パターンの回路から\(I/3\)の電流をもらうことになります。
従って、枝Aのみで重ね合わせを考えると、電流の合計\(I_A\)は、
$$I_A=I-\frac{I}{3}\times 3=0$$
となります。

つまり、1つの枝に着目したとき、
自身の電源による電流は他の電源から電流により打ち消され、
「0A」になるということが分かります。

回路の対称性から、枝B、枝C、枝Dの電流も同様に\(I_B=I_C=I_D=0A\)となります。

従って、端子a-b間には電流が流れないので、\(V_{ab}=9V\)となることが分かります。

(3)\(I_R\)を求める

\(R_{ab}\)と\(V_{ab}\)を求めることができたので、添付画像の上部右側の等価回路より、\(I_R\)を求めます。
$$I_R=\frac{V_{ab}}{R+R_{ab}}=17.14[A]$$
が得られます。

(4)\(P_R\)を求める

抵抗\(R\)に流れる電流\(I_R\)が得られたので、電力\(P_R\)の導出が可能になります。
$$P_R=R\cdot I_R^2=147[W]$$
となります。

回路に複数の電源が接続されている場合、計算が複雑になり、解導出に時間がかかります。

解けるけど時間がかかるという問題は、実際の試験ではすごくプレッシャーがかかるので、
できるだけミスなく効率的に導出するテクニックを身につける必要があります。

テブナンの定理は電験三種の問題と相性がよく、
複数の電源が接続される問題はテブナンの定理で処理できる印象があります。

苦手な方はこの解説を機にテクニックを身につけていただければ幸いです。