H29 問16


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解説

三相交流回路に関する問題です。

三相交流回路はデルタ結線とスター結線があります。
そして、変換やその他公式をみるといろんなところに\(\sqrt{3}\)やら\(3\)やら\(1/\sqrt{3}\)がついて、
ちゃんと覚えるのに苦労します。
(私はちょっと時間が経ったらすぐに忘れてしまいます。)

とにかく、電源のデルタースター変換だけは覚えておきましょう!
デルタからスターへの変換は\(1/\sqrt(3)\)倍
スターからデルタへの変換は\(\sqrt{3}\)倍
です。

どっちがどっちか分からなくなるという人は、とにかくデルタからスターへの変換は\(1/\sqrt(3)\)倍
だけ覚えてください。

困ったら、スター結線に変換する。そのときは\(1/\sqrt(3)\)倍する。
この気持ちがあれば、スター結線があなたを答えに導いてくれます。
(少なくともこの記事を書いている2019年12月の段階では私はそう信じています)

では、スター結線を信じて解説を進めていきます。

設問(a)について

まず力率について考えていきますが、電源を無視して負荷のみで導出が可能です。
幸い、負荷側の回路はスター結線になっているので、変換は行いません。

力率とは、負荷の実部成分の割合になります。\(R/|\dot{Z}|\)を求めればよく、
\(\frac{R}{|\dot{Z|}}=\frac{R}{\sqrt{R^2+(2\pi fL)^2}}=0.95\)となります。

次に有効電力を導出します。

電源回路がデルタ結線になっているので、ここでデルタースター変換の登場です。
回路図を描くと、添付画像の左上から右上の図のように変換ができます。

スター結線にすると何がいいかというと、
三相のそれぞれの回路の電流が全て中点で合流し、その合計が0になることです。

電源から負荷の出口(図中の中点\(O’\)まで)を1つの閉じた回路と考えてよく、
中点で電流が0になるので、
他の相の回路の負荷の大きさや、他の相の回路から流れ込んでくる電流を気にしなくていい
というのが三相交流回路の魅力的なところです。

その結果、スター結線にしてしまえば、同じ回路が3つあると考えればいいので、
とりあえず1つの相について計算をして、
あとは3倍すればOKというアプローチで解を求めることができます。

というわけで、まず1つの相の有効電力を求めます。

有効電力は\(P=\frac{|\dot{V}|^2}{|\dot{Z}|}cos\theta\)より求めることができ、\(P=2440W\)となります。
次に三相分の電力にするには、回路3つ分の合計つまり3倍すればいいことになり、
\(P_{all}=3\times P = 7320W\)が導出でき、最も近い\(7.28\times 10^3 W\)が解となります。

設問(b)について

設問(b)では、負荷にコンデンサを接続するのですが、
このコンデンサがデルタ結線になっています。

当然スター結線に変換するわけですが、負荷側は\(1/\sqrt(3)\)倍にならないのが、三相回路のいじらしいところです。
コンデンサの場合、デルタ―スター変換は各素子の値が3倍になります。
ちなみに抵抗やコイルの場合、デルタ―スター変換は各素子の値が1/3倍になります。

スター結線信者の私は当然この関係を暗記しているかというと、

当然、覚えていません。

公式は覚えるものじゃなく、作るものです。
というわけで、作り方を覚えておきましょう

添付画像の右のページの右上の部分を参照ください。

点1-点3の間の合成インピーダンスをまず求めます。
この計算で\(C_{13}=\frac{3}{2}C\)という関係が得られます。

次に中点\(O’\)がある場合、つまりデルタ結線の場合の\(C’\)を仮定して、
点1-点3の合成インピーダンスを求めます。
この計算で\(C_{13}=\frac{1}{2}C’\)という関係が得られます。

これら2つの式の\(C_{13}\)は一致するはずなので、\(\frac{3}{2}C=\frac{1}{2}C’\)の関係が成り立ち、
この式より、デルタ―スター変換でコンデンサは3倍になると公式が得られます。

さて、晴れてコンデンサ部分をスター結線に変換することができました。
これを用いて、1つの相を抽出したのが添付画像の右ページの下部の回路です。

力率が1になれる条件は、
この回路の合成インピーダンス\(\dot{Z}\)のリアクタンス成分(虚部)が0になる条件を
求めればいいことになります。

従って、合成インピーダンスの式を変形していくと、
リアクタンス成分として、\(X=\omega L(1-3\omega^2LC)-3\omega CR^2\)が得らえます。

この部分が0になる\(C\)の条件として、
\(C=\frac{L}{3(\omega^2L^2+R^2)}\)が得られ、これが設問(b)の解となります。

三相交流回路は公式が多いのですが、覚えがたいものが多いです。
無理に公式を覚えるよりも、
回路の仕組みを理解して、電気回路のルールをうまく使って、
問題を解いていくことが正解率を上げるポイントだと私は思います。

何より、その方が問題を解くのが楽しくなります。

参考書の解き方をマネするよりも、いろんな解き方を試して、
自分に合った方法を身につけていくのがいいと思います。