R01 問09
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解説
LCR並列回路に関する問題です。
各周波数を変化させて、電流の大小関係を求める問題です。
解法にはいくつかアプローチがあると思いますが、私は電流を計算しない方法を選択します。
私の場合ですが、交流の並列回路の電流計算は複雑になるので、できればやりたくありません。
この問題は電流を求めなくても、周波数が変化したときの電流の振る舞いが理解できていれば、
直感的に解を求めることが可能です。
添付画像の左のページでは電流の振る舞いから解を求める方法を、
添付画像の右のページでは電流の計算から解を求める方法を、
それぞれ記載しています。
以下では2種類の解法を用いて解説していきますので、相性がいい方法を選択してください。
周波数に対する電流の振る舞いから、電流の大小関係を求める方法
添付画像の左のページの解説になります。
ポイントは角周波数\(\omega\)が小さい場合、大きい場合、共振周波数の場合の3つのパターンでの
電流の振る舞いを考えることです。
(1)角周波数\(\omega\)が小さい場合
この条件では、
コンデンサのインダクタンス\(X_C=1/\omega C\)は大きな値、
コイルのインダクタンス\(X_L=\omega L\)は小さな値、
抵抗\(R\)は周波数によらず\(100k\Omega\)です。
並列回路では、その合成インピーダンスは最も小さい負荷に依存します。
抵抗値が小さい経路があれば電流の多くはその経路を選択して通るからです。
従って、この場合、電流の多くはコイルを流れ、
合成インピーダンスは\(X_L\)に依存し、小さな値になります。
(2)角周波数\(\omega\)が大きい場合
この条件では、
コンデンサのインダクタンス\(X_C=1/\omega C\)は小さな値、
コイルのインダクタンス\(X_L=\omega L\)は大きな値、
抵抗\(R\)は周波数によらず\(100k\Omega\)です。
この場合、電流の多くはコンデンサに流れ、
合成インピーダンスは\(X_C\)に依存し、小さな値になります。
(3)角周波数\(\omega\)が共振周波数の場合
共振周波数では虚数成分が’0’となるので、\(Z=R\)となります。
この場合、電流は全て抵抗に流れ、
合成インピーダンスは\(100k\Omega\)とそこそこ大きな値になります。
では、次に共振周波数を求めてみます。\(LC\)共振の共振周波数\(\omega_0\)は、
$$\omega_0=\frac{1}{\sqrt{LC}}=\frac{1}{\sqrt{1mH\cdot 10\mu F}}=10 krad/s$$
となります。
この共振周波数は、問題の条件\(\omega_2\)と一致します。
従って、問題の条件\(\omega_1=\omega_0/2\)、\(\omega_3=3\omega_0\)となります。
(1)、(2)、(3)の検討で、RLC並列回路の合成インピーダンスは共振周波数で最大値となり、
低い周波数や高い周波数では0に近い値ということが分かったので、
これをもとに角周波数に対する合成インピーダンスのグラフを描いてみると、
添付画像の左のページの下部のグラフのようになります。
このグラフをもとに、\(\omega_2=\omega_0\)、\(\omega_1=\omega_0/2\)、\(\omega_3=3\omega_0\)でのインピーダンスの値が分かるので、
その大小関係を比較すると、\(Z_3<Z_1<Z_2\)という関係になることが分かります。
(\(Z_2\)が最も大きくなることは明らかで、
共振周波数に近い\(Z_1\)が2番目、共振周波数から遠い\(Z_3\)が最も小さくなります。)
電流とインピーダンスの関係は\(I=V/Z\)より反比例の関係になるので、インピーダンスの大小関係より、
電流の大小関係は\(I_3>I_1>I_2\)となることが分かります。
それぞれの周波数の電流の値を計算し、電流の大小関係を求める方法
まず、合成インピーダンスを求めます。
$$\frac{1}{Z}=\frac{1}{R}+\frac{1}{j\omega L}+j\omega C =\frac{1}{R}+\frac{1-\omega^2LC}{j\omega L}$$
合成インピーダンスを求めますと言ったので、もう少し計算を進めたくなりますが、
どう考えてもこれ以上の計算は泥臭くなるので、一旦ここで止めておきます。
求めたいのは電流なので、電流に関する式を立ててみます。
$$I=\frac{V}{Z}=V\cdot \frac{1}{Z}$$
オームの法則を考えていくと、ちょうどいい具合に\(1/Z\)の見つけることができたいので、
先に導出した式をこの部分に代入します。
$$I=V\cdot\frac{1}{Z}=V\left(\frac{1}{R}+\frac{1-\omega^2LC}{j\omega L}\right)$$
なかなか、小ぎれいにまとまりました。
実部と虚部が分かれていて、実部に角周波数\(\omega\)が含まれていないので、
一旦、式変形を止めておきます。
次に\(\omega_1\)、\(\omega_2\)、\(\omega_3\)を代入していきます。
ここで\(L=1mH\)、\(C=10\mu F\)や、
\(\omega_1=5krad/s\)、\(\omega_2=10krad/s\)、\(\omega_3=30krad/s\)
を代入しません。
\(\omega_2=\omega_0=1/\sqrt{LC}\)、\(\omega_1=\omega_0/2=1/2\sqrt{LC}\)、\(\omega_3=3\omega_0=3/\sqrt{LC}\)
を代入します。
$$I_2=V\left(\frac{1}{R}+\frac{1-(1/LC)\cdot LC}{j(1/\sqrt{LC})\cdot L}\right)=\frac{V}{R}$$
$$I_1=V\left(\frac{1}{R}+\frac{1-(1/4LC)\cdot LC}{j(1/2\sqrt{LC})\cdot L}\right)=V\left(\frac{1}{R}-j\frac{3}{2}\sqrt{\frac{C}{L}}\right)$$
$$I_3=V\left(\frac{1}{R}+\frac{1-(9/LC)\cdot LC}{j(3/\sqrt{LC})\cdot L}\right)=V\left(\frac{1}{R}+j\frac{8}{3}\sqrt{\frac{C}{L}}\right)$$
\(I_1\)、\(I_2\)、\(I_3\)の虚部の大きさを比較すると、\(I_3>I_1>I_2\)
実部は角周波数によらず全て同じ値となるので、\(I_3=I_1=I_2\)
従って、\(I_3>I_1>I_2\)という大小関係であることが分かります。
計算が得意な方や、計算で解を出さないと気持ち悪いと感じる方は、
電流を計算するアプローチで解を求めてよいと思います。
ただし、解説でも気を付けていますが、交流の並列回路に関する問題は効率よく計算をしていかないと、
かなり時間を使ってしまいます。
本番では3-5分程度で答えを出す方法がないか模索しないと、
20問近い問題を制限時間内で回答することは難しくなります。
複雑な計算はできるだけ避けて、
原理的に考えるとこうなるだろうという感覚をもって、
解答を導くことも必要になってきます。
肩の力を抜いて、できるだけ落ち着いた状態で問題と向き合えば、
ふっとアイディアが下りてくることがあります。
そうなると勉強はますます楽しくなります。
この解説がそのきっかけになれば幸いです。