R01 問07


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解説

直流回路に関する問題です。

回路に抵抗だけでなく、コイルとコンデンサが含まれていることが
この問題の特徴となります。

直流回路でのコイルとコンデンサの振る舞いを理解しておくことがこの問題のポイントとなります。
以下2つの特徴を覚えておきましょう。

  1. 直流回路ではコンデンサは開放(\(R_C=\infty\))
  2. 直流回路ではコイルは短絡(\(R_L=0\))

これらのポイントをおさえて、等価回路を考えると、
添付画像のような\(R_2\)と\(R_3\)の並列回路で表すことができます。

等価回路ができれば、あとは合成抵抗の式とオームの法則から電流を導出することができます。
問題で記載されている選択肢と一致するように式変形の仕方は気を付ける必要があります。

似たような形になったら、そこで式変形を一旦やめて、
他の式に代入するというアプローチで解を導出するのがよいと思います。

解は以下のようになります。
$$R=\frac{1}{\frac{1}{R_2}+\frac{1}{R_3}}$$
$$I=\frac{V}{R}=\frac{V}{\frac{1}{\frac{1}{R_2}+\frac{1}{R_3}}}$$

補足では、直流回路におけるコイルとコンデンサの抵抗について解説しています。

この問題が解けることよりも、この補足のほうが重要だと思っています。
直流回路での電流/電圧の時間的な振舞いは”過渡現象”と呼ばれます。

この"過渡現象"は二種の理論で登場する題材ですし、
自動制御の理解を深めていくためも必要になってきます。

電源をONした瞬間、または電源をOFFした瞬間の電流/電圧の振る舞いを問われることが多く、
ON/OFFの瞬間の状態を求めるには微分積分を使う必要があり難しいのですが、

ここでは、ON/OFFの瞬間の変化は定性的な説明に留め、
ON/OFFの瞬間からずーっと時間が経ち、変化が安定した状態(”定常状態")
について解説していきます。

コンデンサの過渡現象

まず、コンデンサの過渡現象について解説していきます。
添付画像の左のページ下部には①から④の回路が描かれています。

①で回路のスイッチをONにし、時間経過とともにコンデンサの電流/電圧が
どう変わっていくかを②、③、④で表しています。

この②、③、④の電流/電圧の変化を過渡現象といい、特に④の状態は定常状態と呼ばれます。

スイッチをONにした瞬間(①→②)では、電源\(E\)の電圧は全てコンデンサに印加されます。
しかし、コンデンサは電荷を貯めるための容器なので抵抗は小さいです。
(もしコンデンサの抵抗が大きいと、充電するだけでどんどん素子が発熱してしまいます。)

従って、スイッチをONにした瞬間(①→②)は回路の抵抗が小さく大きな電流が流れます。

コンデンサに電流が流れると、コンデンサに電荷が蓄積されます。
電荷と電流の関係は\(Q=I\cdot t\)と表されるので、コンデンサの電荷は電流が流れると
時間に比例してどんどん増えていきます。

一方、コンデンサの電圧は\(V=Q/C\)と表されます。つまり電荷が増えていくと、
コンデンサの電圧\(V_C\)はどんどん高くなっていきます。

電源電圧\(E\)とコンデンサの電圧\(V_C\)の電位差\(\Delta V = E-V_C\)が小さくなります。
この電位差\(\Delta V\)は電流を流すために使われる正味の電圧の大きさを表しています。

従って、コンデンサの電圧が高くなると、電位差\(\Delta V\)は小さくなり、
電流も小さくなっていきます。(②→③)

コンデンサの電圧\(V_C\)は最終的に電源電圧\(E\)まで上昇します。
そのとき、電位差\(\Delta V=0\)となるので、定常状態④では電流は0になります。

すなわち、定常状態でコンデンサの抵抗は\(R_C=\infty\)(開放)となることを表しています。

コイルの過渡現象

コイルの過渡応答については電流目線、電圧目線の2通りの解説をしていきます。
後者の方が参考書でよく用いられており一般的な解説なんですが、

電気回路と磁束のつながりにも触れておきたく、ここでは2通りの解説を提示させていただきます。
(定性的な説明だけなので、そんなに難しい話は出てきません。)

添付画像の右ページの上部の回路では、
①で回路のスイッチをONにし、時間経過とともにコイルの電流
どう変わっていくかを②、③、④で表しています。

スイッチをONにした瞬間(①→②)では、電源\(E\)の電圧は全てコイルに印加されます。
このとき、コイルに電流を流そうとするエネルギーは、
コイル内で磁束を発生させるためのエネルギーとして使われます。

コンデンサは電荷を蓄えますが、コイルは磁束を蓄えます。

ここで、磁束は\(\Phi = L I\)という関係で表されるので、コイルが磁束を蓄えるにつれて、
電流が増えていきます。(②→③)

電流が増えるについて、磁束の変化が少しずつ落ち着いていき、
定常状態④では電流、磁束ともに一定の値となります。

このとき、コイルに流れる電流はコイル以外の抵抗\(R\)で決まり、\(I=E/R\)となります。
これはコイルには電圧がかからないことを意味しており、
定常状態④ではコイルの電圧\(V_L=0\)となります。

すなわち、定常状態でコイルの抵抗は\(R_L=0\)(短絡)となることを表しています。

添付画像の右ページの中央部分のグラフは、
スイッチを入れたあとのコイルの電流の変化を表しています。
(黒線は電源電圧\(E\)です。コイルの両端の電圧ではないので注意してください)

スイッチをONにして、回路全体に電源電圧\(E\)が印加されますが、
電流は電源電圧に比べてゆっくりと増えていくことが分かります。

グラフ上の電源電圧と電流の間にできる隙間が、コイルで磁束を発生させるためのエネルギーを表しています。

磁束は電気回路上では目に見えてきませんが、
エネルギーという視点でみるとその輪郭がぼんやり見えてきます。

コイルの抵抗としての振る舞いは、磁気の世界にエネルギーを変換(磁束を発生)することで成り立っている
ということがこの解説でなんとなく伝われば幸いです。

最後にコイルの電圧の変化について解説します。

添付画像の右ページの下部の回路では、
①で回路のスイッチをONにし、時間経過とともにコイルの電圧
どう変わっていくかを②、③、④で表しています。

先の説明で話した通り、
スイッチをONにした瞬間(①→②)に、磁束を発生させるためにエネルギーが使われるので、
コイルの電圧\(V_L=E\)となります。

時間経過とともに、磁束が増えていき、電流が上昇します。(②→③)
その結果、コイルの電圧\(V_L\)は徐々に小さくなっていき、定常状態④では\(V_L=0\)となります。

ここで、スイッチをONにした瞬間(①→②)では、
磁束を発生させるために、電源電圧\(E\)は全てコイルに印加されるのですが、

視点を変えると、電流の流れを妨げるようにコイルが電源電圧を打ち消すように電圧を発生させているとも表現できます。

(電源電圧が全てコイルに印加される)=(コイルが電源電圧と逆向きの電圧を発生する)

この二つの表現は電気的には同じ結果をもたらすのですが、
実際の電気回路設計では後者の方が回路の動作を説明しやすいので、
後者の方が広く慣れ親しんだ表現になっています。(と私は思っています)

コイルが電源電圧と逆向きの電圧を発生するという表現から、
過渡現象におけるコイルの電圧は逆起電力と呼ばれます。

解答よりも補足のほうがボリュームが多くなってしまいましたが、
過渡現象という電流/電圧の時間変化のバックグラウンドをもとに、
直流回路のコイルとコンデンサの振る舞いが明確になるということを理解していただければ幸いです。