R01 問11
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解説
半導体(太陽電池)に関する問題です。
太陽電池はダイオードどちらもpn接合という同じ構造をもつことがこの問題のポイントです。
pn接合の太陽電池とダイオードの機能について、以下では解説していきます。
pn接合とは
添付画像の左のページでは、まずpn接合について解説しています。
半導体とは電子を4つもつ原子のことを言います。(正確には最外殻に4つですが気にしなくていいです)
Si(ケイ素、シリコン)、C(炭素)、Ge(ゲルマニウム)などがあげられますが、
Si(ケイ素、シリコン)だけ覚えておけば十分です。
ついでに、SiC(炭化ケイ素、シリコンカーバイド)、GaAs(ヒ化ガリウム、ガリヒ素)
という化合物半導体を知っていればパーフェクトです。
Si原子をたくさん集めると、電子が8個になるようにくっつき電気的に安定します。
1個のSiのまわりを4個のSiが集まると、うまく電子が8個になります。
(原子の周りに8個の電子というのがキーワードです。)
Si原子をたくさん集めた結晶に、不純物を意図的に注入します。
電子を3つもつ原子を注入したものをp型半導体、
電子を5つもつ原子を注入したものをn型半導体と言います。
ここで、電子を3つもつ原子をアクセプタと言い、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)などが
挙げられます。(アクセプタという言葉だけ覚えておけば十分です)
また、電子を5つもつ原子をドナーと言い、P(リン)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)などが
挙げられます。(ドナーという言葉だけ覚えておけば十分です)
p型半導体では、アクセプタにSiがくっつくのですが、電子が7個しかなく、不安定な状態となります。
結晶は電子が8個で安定するので、電子が1個足りない、すなわち電子の穴ができます。
この電子の穴を正孔と言います。
アクセプタの周りの正孔(電子の穴)は不安定で、周辺のSiの電子が正孔に入り、
結果Siの周りに正孔が移動します。
正孔にポコポコ電子がはまることで、正孔がふわふわ動いているような状態ができます。
一方、n型半導体では、ドナーにSiがくっつき、電子が9個という多価な状態になります。
余った1個の電子は、不安定で、ドナーから離れ自由電子として結晶内をふわふわと動きます。
p型半導体は、電子を3個持つアクセプタが注入されており、正孔を持つ。
n型半導体は、電子を5個持つドナーが注入されており、自由電子を持つ。
ということをおさえておきましょう。
次に、このp型半導体とn型半導体をくっつけます。このくっつけた状態をpn接合と言います。
p型半導体とn型半導体の境界面では、n型半導体の自由電子がp型半導体の正孔にスポッとはまり、
電気的に安定な状態になります。
正孔と自由電子は熱で漂っているだけなので、
この正孔と自由電子の結合は2種類の結晶をくっつけただけで勝手に発生し、どんどん進行します。
しかし、全ての正孔と自由電子がなくなる前に、結合は止まります。
ここがポイントです。
正孔を失ったアクセプタはマイナスに帯電し、
自由電子を失ったドナーはプラスに帯電します。
その結果、p型半導体とn型半導体の境界付近で電位差ができます。
この電位差は、
p型半導体中の正孔がn型半導体に侵入するのを抑え、
n型半導体中の自由電子がp型半導体に侵入するのを抑える壁のように働きます。
(添付画像の下部)
結果、電位の壁が越えられず、正孔と自由電子はそれぞれの結晶の端に閉じ込められます。
この壁となる電位差を空乏層と言います。
p型半導体とn型半導体の接合部で空乏層ができ、この空乏層は正孔と自由電子の移動を妨げるというのが、
pn接合のポイントになります。
太陽電池
添付画像の右のページの上部で、太陽電池について解説しています。
pn接合の境界付近に光をあてると、Siのまわりの電子が自由電子となり、電子が抜けた穴は正孔となります。
光によってできた自由電子と正孔は空乏層(電位差)により、
正孔はp型半導体の端へ、自由電子はn型半導体の端へそれぞれ引き離されます。
この状態で、素子に抵抗をつなぐと、正孔と自由電子は半導体と抵抗の間を循環します。
すなわち光によりできた正孔と電子が起電力(電圧)となり、抵抗に電流が流れることを意味します。
以上が太陽電池の原理となります。
また、問題では、電流が流れているときの太陽電池の温度についての設問がありますが、電流が流れるとあらゆる素子は反応します。
超電導体のように抵抗がなく温度が上がらないものや、ペルチェ素子のように温度勾配を作るもの
は存在しますが、電流が流れることで温度が下がるようなものは存在しません。
ダイオード
添付画像の右のページの下部で、ダイオードについて解説しています。
ダイオードの動作原理について考えるために、直流電源\(V_{DD}\)をpn接合に接続します。
p型半導体側に+の電圧を印加する場合、pn接合の両端には空乏層の電位差を打ち消すように電圧が印加されます。
従って、p型半導体中の正孔はn型半導体側に移動しやすくなり、
n型半導体中の自由電子はp型半導体側に移動しやすくなります。
結果、直流電源とpn接合の間で正孔と自由電子が循環し、回路に電流が流れます。
次に、n型半導体側に+の電圧を印加する場合を考えます。
この場合は逆に、pn接合の両端には空乏層の電位差をさらに大きくするように電圧が印加されます。
結果、正孔と自由電子はそれぞれの結晶内に閉じ込められ、電流はほとんど流れません。
このように、印加する電圧の向きによって電流が流れたり、流れなかったりすることを
整流性といい、ダイオードの主たる特徴となります。
半導体中の電子や正孔の振る舞いはいろんな教科書や参考書で解説されています。
エネルギー準位、熱拡散、フェルミ統計など小難しい言葉がたくさん出てきますが、
電験三種では、電荷がどういう風に動くかイメージできれば十分です。
できるだけ、難しい言葉は使わず、定性的に解説はまとめたつもりです。
半導体のイメージが理解できれば幸いです。