R01 問17


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解説

論理回路に関する問題です。
主にNAND回路に関する問題となっています。

論理回路はNAND回路に始まり、NAND回路に終わるというくらい、NAND回路はいろんなところで使われます。
特に真理値表が作れるどうかが重要です。(というかそれが全てです)
ミスなくスムーズに真理値表を作れるように問題を解いて慣れていきましょう。

また、この問題ではMOSFETを組み合わせて作る論理回路"CMOS回路"についても少し触れています。
動作原理は理解しておくと、電気回路設計をされる方は役に立つと思います。

設問(a)

問題ではまずMOSFETを組み合わせて作るCMOS回路について触れています。

そもそも、MOSFETの動作原理がイメージできない方も多いと思います。

何となくわかっているけど、
シンボルを見て、nチャネル、pチャネルかの見極めがあいまい
G(ゲート)、S(ソース)、D(ドレイン)の位置関係があいまい、
という感じだと思います。(私はそうです。使わないとすぐ忘てしまいます)

添付画像の左ページの上部にnチャネルMOSFETとpチャネルMOSFETの原理をまとめました。
シンボルの見た目の違いは、D(ドレイン)-S(ソース)間の矢印の向きだけです。

覚え方は「矢印は電子の集まる方向を表している」です。

G(ゲート)の方向に矢印が向いているシンボル(添付画像の左側)は、
\(V_{GS}>0\)を印加すると、G(ゲート)に電子が集まり、D(ドレイン)-S(ソース)間に電子の道ができます。
電子(n)の道(チャネル)ができるので、nチャネルMOSFETとなります。

G(ゲート)と逆向きに矢印が向いているシンボル(添付画像の右側)は、
\(V_{GS}<0\)を印加すると、G(ゲート)に正孔が集まり(電子はゲートから追いやられ)、
D(ドレイン)-S(ソース)間に正孔の道ができます。
正孔(p)の道(チャネル)ができるので、pチャネルMOSFETとなります。

以上を踏まえて、nチャネルMOSFETとpチャネルMOSFETをくっつけたCMOS回路の動作について考えます。

入力信号が低電位「0」の場合、pチャネルMOSFETがONとなり、出力信号の電位は電源電圧となるため、高電圧「1」となります。

入力信号が低電位「1」の場合、nチャネルMOSFETがONとなり、出力信号の電位はGNDとなるため、低電圧「0」となります。

以上の動作から、CMOSゲートはNOT回路として動作することが分かります。

添付画像の左ページの下部にNAND回路の動作と(イ)、(ロ)、(ハ)の真理値長について解説しています。
この結果、CMOSゲートと同じくNOT回路として動作するのは、(イ)と(ハ)になることが分かります。

設問(b)

ポイントは以下2点です。
(1)出力信号が入力信号として使用される
→入力信号と(少し)前の出力の組み合わせを考えて真理値表を作る
(2)コンデンサが接続されている
→時間が経つとコンデンサより後段の論理回路の入力信号のレベルが変化する

これらのポイントを意識しながら、各回路の動作について考えていきます。

図(二)

添付画像の右ページの上部に解説を記載しています。

ここでは点aが1(高電位)の場合の動作を考えます。

このとき、点bが0、点cが1となります。
そのため、点c付近の抵抗を介して、点cから点bに電流が流れます。
すると、コンデンサが充電され、コンデンサの電圧\(V_c\)の電位が上昇します。

結果、後段のNAND回路の入力信号のレベルが0から1に変化し、点cは0となります。

点cが0になると、今度は点bから点cに電流が流れるため、コンデンサの電圧\(V_c\)の電位が減少し、
後段のNAND回路の入力信号のレベルは再び1から0に変化します。

このように、コンデンサの電圧\(V_c\)の電位に応じて、NAND回路の入力信号と出力信号が定期的に変化するのが、
この回路の特徴です。

この回路は問題の性質Ⅰの特性を持っていることが分かります。

性質Ⅰ:出力端子からパルスが連続的に発生し、ディジタル回路の中で発振器として用いることができる。

論理回路の電流の経路が分からないという方はたくさんいると思います。

論理回路の入力インピーダンス(抵抗)は大きく、出力インピーダンス(抵抗)は小さい
ということを押さえておきましょう。

この回路のように、論理回路の出力が論理回路の入力と出力に接続される場合、
電流は論理回路の出力に流れます。
論理回路の入力には電流は流れず、電圧を監視して、自身の出力を制御しています。

論理回路に関わらず、電子回路や論理回路で使われるIC(集積回路)と呼ばれる半導体素子は、
入力インピーダンスが大きく、出力インピーダンスが小さいという設計になっているのが一般的です。
(高周波用の素子は入力インピーダンスが50\(\Omega\)で設計されていますが、電験では対象外なので気にしなくていいです)

図(ホ)

添付画像の右ページの下部の左側に真理値表を記載しています。

★の部分にコンデンサが接続されているため、
点dが1の場合、時間が経つとコンデンサの電圧\(V_c\)が上昇し、抵抗の電圧\(V_r\)は減少します。
その結果、点dのレベルは0に変化し、後段のNAND回路の出力も1になります。

コンデンサが接続されていますが、図(二)の回路のように定期的にレベルが変化するということはありません。

図(へ)

添付画像の右ページの下部の右側に真理値表を記載しています。

入力1、入力2に加えて前の出力の3つの信号の組み合わせで真理値表を作ります。
ミスをなくすために、点eの状態も真理値表に記載するのがいいでしょう。

ポイントは入力1と入力2がどちらも1の場合、前の出力のレベルに応じて、出力のレベルが変化するということです。
この動作は、論理回路のフリップフロップ回路の基本機能となります。

従って、図(へ)は問題の性質Ⅱを持っていることが分かります。

性質Ⅱ:「0」や「1」を記憶する機能をもち、フリップフロップの構成にも用いられる。

論理回路という分野は、電気主任技術者の実務から最も遠い分野だという気がします。

ただ、CMOS回路やNAND回路の知識というのは、電気設計者としては最低限必要なものなので、
技術者の基本スキルだと思って知識を身につけていただければ幸いです。